愛知国体の友野選手のSPが終わって。
しみじみ思ったのは、「これは誰にでも滑れるプロではないな」ということ。
これはこの人にしか滑れない、というプロがいくつかあると思う。
浅田真央のラフマニノフ、バラード1番、
髙橋大輔の「eye」、羽生結弦の「SEIMEI」、宇野昌磨の「グレートスピリット」
町田樹の「第九」ネイサンチェンの「ネメシス」、アリーナ・ザギトワの「ドンキ」、などなど。
同じ曲を使う事は数あれど、この人のコレ、というのはなかなかない。
友野選手の「The Haedest Button to Button」はまさにそれではないかと思う。
この音楽を聴いたとき、なんか混乱しているのかな、というようなメロディで、
ミルズさんがこれを選んだ意図がよくわからないけれども、解説者が
「若者が自分の居場所を探して悩んでいる」というのをテーマにしている音楽だ、というのを聞いて、なるほど、と思った。
まるで、現代音楽のラベルかフォーレ、ミュライユのようなよくわからない旋律と、
変わったポージングが眼を引いた。
フィギュアのコンテンポラリーといったところか。
決して美しいポージングだけではない、このプロ。
こんな動きをマジでできるのは、友野君しかないかと思う。
このポーズも面白いと思うのです。
ダンサーであり、宴会部長のような彼は、本当の心の内は、あまり明かしていないのではないかと、常々思っていた。
いつも明るく、後輩にも優しく、先輩には礼儀正しい彼の本質はどこにあるのだろう。
たまに感情が爆発したような演技もあれば、しぼんでしまったような演技もあり、
正直よく掴めなかった。
友野君の悩みの心中を表現できるのが、このプロの良さでもあると思う。
最初は、なんだか不可思議な感じのするプロだったが、観れば観るほど、
ひきつけられる。
このプロは何を表現しているのだろう、と考えさせられ、
もっと観たくなる。
そして思う。
このプロを、かのミルズさんと相性が良かったまっちーが滑れるか?
羽生さんが?昌磨が? ネイサンが?
いや、これは友野一希しか滑れない。
上手過ぎず(すみません)下手すぎず、全力で踊り切る友野君だから、
やりきれた。
願わくば、少しミスが減るとよかったのだが、それもまた、
「悩める青年」のプロと言えるのかもしれない。
これを友野君に与えたミルズさんは、すごいと思う。
ミーシャと相性がいい、と言っているけれども、もっとミルズプロの表現者になれる可能性があるんではないか、と感じる。
代役で成功している、と失礼なコメントを頂いていた事もあるが、
ここ一番に強い、ともいえるが、ここ一番にも弱い友野君。
ちなみに、ムーランルージュの最後のステップも好きだが、所々音ハメしないと気持ちが悪いプロなんで、音ハメより音楽表現ができるプロがいいと思う。
来年度のプロにも期待している。