お見事であった。
しかし、誰もがこんな結果は想像していただろうか。
多回転ジャンプを持つ、ロシア女子にはBV(基礎点)からして違うので、
いくら加点を付けても、3Aすらない坂本選手は、表彰台は対象外だったろう。
だから単純に、3Aを持っている紀平梨花選手を日本のエースとして
報道していた。
だけど、その潮目が変わってきたのは、2021年のNHK杯からだろうか。
確かにロシア選手も紀平選手も棄権していたのだが、この優勝は大きかった。
それから全日本優勝して、五輪の選考に入った。
いつしか女子のエースは坂本花織になっていた。
世界ジュニアで表彰台に載って、シニアデビュー。
その年に平昌五輪代表2人に選ばれ、6位入賞。
なのに、いつも二番手だったのがおかしかったのだ。
これで正当評価された・・・・!と感じ入るばかりである。
彼女の勝利は色々な付加価値がついてしまって、すぐには、喜べなかった。
しかし、その気持ちを払拭する出来事が起こった。
新葉とのハグである。
関東より関西の方が勢力を増している昨今、新葉は東の王者だったといえよう。
ジュニアの頃から、MIRAIのエースとして嘱望されていたが、
いまいち本番に弱いイメージがついてしまった。
勝気な発言から、「かたくなな子かな」という印象を持っていた。
そんな彼女が、坂本花織のメダル確定に、リンクサイドに戻ってきて、
泣きながらハグをしていたのに、びっくりした。
お互いの健闘を称えあったり、ちょっぴり相手の好成績にうらやましい気持ちが
混ざっていたとは思うが、ライバルの勝利にこれほど素直な新葉を初めて
見た気がする。
そして、観客席で拍手している昌磨を思い出し、
「ああ、これが真剣勝負の先にある美しいもののひとつなんだな」と
思ったのだ。
あの涙はとても美しかった。
二人のハグは私たちの胸を熱くさせた。
そう、坂本花織の勝利は、真剣勝負の先にある美しいものを連想させた。
だからみんなが「希望」と口々に賞賛し始めたのだ。
彼女はミラノを目指すと言っている。
これからは、同じ戦い方はできない。
でも、きっと彼女は正々堂々と真剣勝負に挑んでいくのだろう。
あらためて、
北京五輪 銅メダリスト 坂本花織選手。
おめでとう!!!